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放射線を知る

排水・排気のモニタリング

排水・排気のモニタリングとはどのようなことを行うのでしょうか?

「場のモニタリング」項では外部被ばく管理としてガンマ線や中性子線の測定と監視を行うことを紹介しました。非密封の放射性物質を取り扱う放射線施設では、この他にも、施設から放出する排水・排気に含まれる放射性物質により、施設周辺での公衆の線量(被ばく)が年線量限度を十分下回っていることを確認するため、施設設置者によって排水・排気のモニタリング、すなわち施設から放出される排水中・排気中に含まれる放射性物質の濃度の測定が行われています。

公衆の実効線量の限度は、法令*1により規制されており、医療行為や自然放射線による線量を除いた条件で年間1ミリシーベルトです。多くの場合、人の被ばくの要因は外部被ばくが中心となりますが、アルファ線やベータ線を放出する核種では、放射性物質を体内に取り込むことによりおきる内部被ばくを考慮することが重要になります。
このため、法令では非密封の放射性物質を取り扱う放射線施設では施設の境界となる排水口、排気口における放射性物質の濃度について、放射性同位元素の種類が明らかで、かつ、1種類である場合には、その放射性同位元素について法令で定められた濃度以下とすること、また、放射性同位元素の種類が明らかで、かつ、2種類以上の放射性同位元素がある場合は、それらの放射性同位元素の濃度が、それぞれの放射性同位元素についての法令で定められた濃度に対する割合の和が1となるような放射性同位元素の濃度以下とするよう定められています*2

  • ※1放射性同位元素等の規制に関する法律ほか
  • ※2上記のほか、排水中・排気中に含まれる放射性同位元素の種類が明らかでない場合、放射性
      同位元素の種類が法令で定められていない場合についても管理すべき濃度が定められています。

「放射性同位元素についての法令で定められた濃度に対する割合の和が1となるような放射性同位元素の濃度」とは具体的にどのように管理するのでしょうか。
特別な場合を除き、放射線施設において自らの施設で取扱う放射性同位元素の種類は明らかですから、放出する各放射性同位元素の濃度を求めることができれば、各放射性同位元素について法令で定められた濃度に対する比を求め、合算することで管理は可能です。    

然しながら、放出する放射性同位元素が全てガンマ線を放出する場合であって、エネルギースペクトル分析によって各放射性同位元素の濃度を定量した場合にはこれらの計算も容易ですが、ガンマ線を放出しない放射性同位元素が混在する場合はどうでしょうか。
アルファ線やベータ線もエネルギースペクトル分析を行うことは可能ですが、ガンマ線の場合と異なり、異なる放射性同位元素が混在する状態で、それぞれの放射性同位元素の濃度を定量することは非常に困難です。このため、放射性同位元素の濃度を求めるためには化学的な処理を行い放射性同位元素毎に分離することが必要となります。

多くの種類の放射性同位元素を取扱う施設において、化学的処理を行って放射性同位元素毎にその放射能濃度を求めることは管理上非常に大きな負担になるでしょう。また、排気については連続して放出する場合には連続して測定・監視することが求められており、排気する気体を全て一時的にタンクに貯蔵し、その濃度を求めてから放出することは現実的に不可能です。
このため、全アルファ、全ベータ、全ガンマ測定によって求めた放射能濃度が、その施設で利用する放射性同位元素の内、最も濃度限度条件が厳しい放射性同位元素の放射能濃度であると考える管理が行われています。

「場のモニタリング」項では施設設置者のほか、原子力施設周辺では自治体等によってもモニタリングが行われていることを紹介しました。排水・排気のモニタリングの場合も同様に、排水口、排気口からは離れた地点であるものの施設周辺において水中や空気中の放射能濃度の変化を測定・監視しています。

○排水中の放射能濃度測定記録の例

排水中に存在する可能性のある放射性同位元素の放射能濃度を測定するとともに、濃度限度と比較することで放出可否を判断します。

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