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放射線を知る

場のモニタリング

場のモニタリングとはどのようなことを行うのでしょうか?

先にモニタリング(monitoring)とサーベイ(survey)の違いを紹介したとおり、原子力・放射線利用分野におけるモニタリングは、連続的・継続的に放射線や放射能の量を測定し、その変動を監視することを意味します。この中で、特に場のモニタリング、個人のモニタリングと言った場合には外部被ばく管理の行為を指すことから、ガンマ線や中性子線の測定と監視が主な活動となります。

放射線施設(原子力発電所、高エネルギー加速器施設、放射性物質取扱施設等)の周辺では、施設設置者自身や地方自治体の原子力監視組織、保健衛生組織によって、施設周辺での公衆の線量(被ばく)が年線量限度を十分下回っていることを確認するため、場のモニタリングとして空間のガンマ線(一部で中性子線)の線量や線量率の測定が行われています。

公衆の実効線量の限度は、法令※1により規制されており、医療行為や自然放射線による線量を除いた条件で年間1ミリシーベルトです。被ばくの要因を外部被ばくのみと考えた場合、1年間を365日とすると8760時間であるため、時間単位では約0.114マイクロシーベルト毎時の変化を捉える必要があります。しかし、屋外における放射線の量は、自然放射線が約0.04~0.05マイクロシーベルト毎時あるとともに様々な影響により常に変動※2します。一般的に統計学上では3σを外れた場合に異常ありと判断しますが、自然界の影響により3σを超える変動が発生する可能性も少なくないことから、継続的監視により自然変動とそれ以外の影響を明らかにしていく必要があります。
また、周辺環境における放射線の監視では微小な変化を捉える必要があることから、低い線量率であっても精度の高い測定が可能であるNaI(Tl)シンチレーション式検出器を用いた測定が行われ、線量率推移の監視だけでなく、ガンマ線のエネルギースペクトルの監視も併せて行われています。

 

放射線施設では管理区域内部およびその境界における線量についても施設設置者により、ガンマ線等の測定と監視が行われています。法令により外部放射線に係る線量で実効線量が3か月1ミリシーベルトを超える場所を管理区域とする必要があるため、3か月を13週間、1週間あたりの作業時間を40時間とすると、その線量率は2.5マイクロシーベルト毎時となり、施設周辺の変化と比較すると自然放射線の影響は小さくなりますが、多くの場合、施設周辺の測定と同様にNaI(Tl)シンチレーション式検出器(サーベイメータ)を用いて測定が行われます。    

  • ※1 放射性同位元素等の規制に関する法律ほか
  • ※2 代表的な変動要因:降雨/降雪、積雪、黄砂、霧等
  • 降雨により自然放射線が0.1マイクロシーベルト毎時を超える場合も多い

放射線施設における場の測定では多くの場合、NaI(Tl)シンチレーション式検出器(サーベイメータ)を用いてガンマ線の測定を行いますが、一定以上のエネルギーを持ったガンマ線またはエックス線を利用する高エネルギー加速器施設ではガンマ線の測定のほかに中性子線の測定を行います。これは光核反応により、光子(ガンマ線やエックス線)と原子核の相互作用により中性子が生じ、管理区域境界などでの法令管理上、無視できない放射線の量となる場合があるためです。中性子線の測定にはレムカウンタと呼ばれる中性子線測定専用の測定器を用います。    

外部被ばく測定用の機器の図
出典:環境省 「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料 令和3年度版」

前述の通り、場のモニタリングでは空間のガンマ線または中性子線の線量(実効線量)の測定と監視が一般的ですが、国内でも2021年4月の法令改正により、国際放射線防護委員会 (ICRP) による「組織反応に関する声明」(ICRP Publication118 2011年4月)に基づいた眼の水晶体の等価線量限度の改正が行われ、「定められた5年間の平均で20mSv/年、かついずれの1年においても50mSv/年を超えない」ことが定められたことから、場のモニタリングにおいて高エネルギーベータ線による等価線量の監視の重要性が増すなど、新たな放射線管理技術の必要性が生じています。

外部被ばく管理における場のモニタリング
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