放射線を知る
管理区域とは
放射性物質を取り扱う施設や放射線を発生する装置を使用する施設、原子力施設などに自由に立ち入りができてしまうと不必要な被ばくにさらされるおそれがあります。また、いつ誰がどのくらい放射線に被ばくしたか、といった管理が行えないことは、放射線障害防止の観点から望ましい状態とは言えません。
放射線障害防止のため、関係者以外の立ち入りを制限し、かつ作業者の被ばく管理を適正に行うことを目的とした区域のことを「管理区域」と呼びます。
■管理区域の定義
管理区域は、法令により定められる基準により定義されます。外部放射線に係る線量、空気中の放射性物質の濃度(空気中放射能濃度)、
汚染された物体の表面の放射能密度(表面密度)に定められる基準を超えるおそれのある区域は管理区域に設定する必要があります。
管理区域の基準を下表に示します。
法令の名称 | 外部放射線に係る線量 | 空気中放射能濃度 | 表面密度 |
---|---|---|---|
電離放射線障害防止規則 (第3条) | 外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量との合計が3月間につき1.3mSvを超えるおそれのある区域 | 放射性物質の表面密度が以下※に掲げる限度の1/10を超えるおそれのある区域 | |
放射性同位元素等の規制に関する法律施行規則(第1条 第1項 第1号)、 放射線を放出する同位元素の数量等を定める件 (第4条) | 外部放射線に係る線量が3月間につき1.3mSvを超えるおそれがある場所 | 空気中の放射性同位元素の3月間についての平均濃度が法令に規定する濃度の1/10を超えるおそれのある場所 | 3月間についての平均濃度が以下※に規定する濃度の1/10を超えるおそれのある場所 |
核燃料等の使用等に関する規則第1条 第2項 第2号 核原料物質又は核燃料物質の製錬の事業に関する規則等の規定に基づく線量限度等を定める告示(第1条) | 外部放射線による実効線量が3月間につき1.3mSvを超えるおそれのある区域 | 空気中の放射性物質の濃度が3月間についての平均濃度が法令に規定する濃度の1/10を超えるおそれのある区域 | 放射性物質によって汚染された物の表面の放射性物質の密度が以下※に規定する表面密度限度の1/10を超えるおそれのある区域 |
医療法施行規則 (第30条の26 第3項) | 外部放射線の線量については、実効線量が3月間につき1.3mSvを超えるおそれのある場所 | 空気中の放射性同位元素の濃度が3月間についての平均濃度が法令に規定する濃度の1/10を超えるおそれのある場所 | 放射性同位元素によって汚染される物の表面の放射性同位元素の密度が以下※に規定する密度の1/10を超えるおそれのある場所 |
※ 表面密度限度の値
区分 | 限度(Bq/cm2) |
---|---|
アルファ線を放出する放射性同位元素 | 4 |
アルファ線を放出しない放射性同位元素 | 40 |
■管理区域の構造
管理区域内では放射性物質や放射線を発生する機器などの取扱いが行われます。これらによる放射線障害を防止するため、管理区域の構造には放射線防護の要素が含まれます。
- ・立入制限
- 関係者以外がみだりに管理区域に立ち入ることができないよう、対策を施す必要があります。設備の種類、放射性物質の強度や放射線発生装置などの規模に応じ、柵やロープで囲いを作る、認証を必要とする自動ロック式の扉を設けるなどの対策が必要になります。
- ・放射性物質による汚染の対策
- 非密封の放射性物質を扱う作業室の壁や床は、平滑にし、放射性物質が付着した場合に浸透しないよう塗装などにより仕上げる必要があります。また、タンクやポンプのように放射性物質を含む水を扱う設備では堰を設け、万が一の漏水時にその範囲を限定的にします。
- ・放射線による影響緩和
- 管理区域の境界においては、放射線による線量が1.3mSv/3月を超えないよう、壁や天井のコンクリート厚さを設計することが必要になります。
■管理区域内での遵守事項
管理区域内で従事する作業者の放射線防護の観点より、管理区域内で順守すべき事項があります。以下に一例を示します。
- ・管理区域内では飲食を行わない。
- 管理区域内での飲食は、飲食物と一緒に体内に放射性物質を取り込んでしまうおそれがあるため、禁止されています。
- ・管理区域に立ち入る際は個人被ばく線量計を着用する。
- 法令により個人の被ばく線量を測定することが義務付けられています。これは放射線障害を起こさないよう、被ばく線量を測定し、定められた線量限度を超えないよう管理するためのものです。
- ・管理区域より退出する際は、身体および衣服、持込品の汚染検査を行う。
- これも法令により義務付けられています。管理区域の外へ放射性物質を持ち出してしまうことを防ぐために、身体および持込品の汚染検査が行われます。