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放射線を知る

放射能と放射線は何が違う?

放射能と放射線の違いと、単位について紹介します。

放射能と放射線の違い

放射能と放射線は何が違うのでしょうか?
教科書の回答は次のようになります。

放射能は、放射線を出す能力のことをいう。
放射線を出す能力をもつ物質のことを放射性物質という。

よく懐中電灯と懐中電灯から出る光の関係と対比して例えられています。

放射能と放射線の違い
放射能・放射線の場合 懐中電灯と光の場合
何を出すのか 放射線
出す能力のことを何というか 放射能 光を出す能力
出す物質のことを何というか 放射性物質 懐中電灯
放射能と放射線
出典:一般財団法人 日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」

放射能と放射線の単位

放射能と放射線の単位は次のようになります。

放射能と放射線の単位
単位 説明
放射能 Bq
(ベクレル)
1秒間に原子核が壊変する数を表す値
※壊変:原子核が放射線を出して別の原子核に変わる現象のこと
放射線 Gy
(グレイ)
放射線が人や物に対して与えるエネルギーを表す値
Sv
(シーベルト)
放射線が人に与える影響の大きさを表す値
放射線に関する単位
出典:一般財団法人 日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」

放射能と放射線の歴史

放射能と放射線というキーワードで誰もが思い浮べる、有名な科学者たちの実績をたどり、もう少し探ってみましょう。

レントゲン博士は何を発見したのか

ヴィルヘルム・コンラート・レントゲン(Wilhelm Conrad Röntgen)は、1845年生まれのドイツの科学者です。

1895年のある日、レントゲン博士は真空管の放電実験を行っていました。
真空管の中に2本の電極(陽極と陰極)を入れ、電圧をかけて容器の中の圧力を下げていくと真空管の中で両極間に放電が起こり、真空管のガラスが蛍光を発するようになります。
この陰極線と蛍光の存在は既に知られており、研究が進められていました。
さて、レントゲン博士が真空管全体を紙で覆っていたところ、光は全部遮へいされているのに机上にある蛍光紙が感光していることに気づきます。
蛍光紙を真空管から少し離しても同じです。目には見えないけど何か光のようなものがガラス容器から出ているようです。
レントゲン博士は夢中で実験しました。その不思議な光線は本やガラスを透過します。薄い金属も透過しますが、鉛は無理なようです。蛍光紙の代わりに写真乾板を使ってみるとびっくりするくらい鮮明な写真が撮れます。(骨が写っている画像が有名ですね)
レントゲン博士はこの不思議な光線をX線と名付けました。放射線を発見したのです。
放射線の歴史は、ここから始まります。

ヴィルヘルム・コンラート・レントゲン(Wilhelm Conrad Röntgen)

ベクレル博士は何を発見したのか

アントワーヌ・アンリ・ベクレル(Antoine Henri Becquerel)は1852年生まれのフランスの科学者です。

ベクレル博士は長年にわたり蛍光物質の研究をしていました。レントゲン博士のX線の発見の報を聞き、蛍光と放射線には何かの関係があると考えました。ウラン化合物を日光にさらすと蛍光を発しますが、蛍光と同時に放射線を出すのでは?と考えたのです。
1896年に早速実験を行い、日光にさらしたウラン化合物から発した蛍光を遮へいしても、写真乾板を感光させることを確かめました。
その後実験を継続しようとしましたが、あいにく曇天が続きます。実験ができないので机の中にウラン化合物と写真乾板をしまっておきました。そして実験再開しようと机の中の写真乾板を見ると、なぜか写真乾板が感光していました。ベクレル博士は、ウラン化合物は日光を当てなくても持続的に目に見えない何かを出しているのでは?と考え、ウラン化合物が出している何かがX線とは違う放射線であることを空気の電離や電場・磁場によって曲がることによって確認し、ベクレル線と名付けました。
ベクレル博士は、ウラン化合物が放射線を出す能力をもつ物質であることを発見したのです。
現在、放射能の単位としてベクレル(Bq)が使われています。

アントワーヌ・アンリ・ベクレル(Antoine Henri Becquerel)

キュリー夫人は何を発見したのか

マリア・サロメア・スクウォドフスカ=キュリー(Maria Salomea Skłodowska-Curie)、通称キュリー夫人は1867年生まれのポーランド出身、フランスの科学者です。

キュリー夫人は夫のピエール・キュリーとともに、ベクレル博士が発見したウラン化合物から出る放射線に着目して研究していました。ウラン化合物の放射線は化合物の形や光や温度には影響されず、ウラン原子の含有量のみに関係されることがわかりました。
そして、ウラン以外にも放射線を出す能力があるのではと研究を進め、1898年にトリウムにも同じ性質があることを発見し、放射線を出す能力のことを放射能、放射線を出す物質のことを放射性物質と名付けました。
さらに同年、放射能を持つ未発見の新元素を2つ発見し、それぞれポロニウムとラジウムと名付けました。
かつては放射能の単位としてキュリー(Ci)が使われていました。(1Ciは最初にラジウム1gの放射能として定義され、現在は1Ci=37GBqと定義されています)

マリア・サロメア・スクウォドフスカ=キュリー(Maria Salomea Skłodowska-Curie)

「放射線の種類(粒子線と電磁波、直接電離と間接電離)」項では原子の構造をもととして、様々な視点から放射線の種類について説明します。

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