本文へジャンプ

放射線を知る

施設の管理と場の管理の実例

原子力施設において、施設や場(作業場所等)を健全に維持管理することは放射線業務従事者の放射線障害を防止するために重要です。
また、設備故障の発生や放射性物質による場の汚染を早急に検知し適切に対処するためには、平時の施設や場の状況を把握しておくことが重要となります。
施設や場の管理において、その実例とどのような点に注目するかを特に「使用施設」と「廃棄施設」に焦点を当ててご紹介します。

■使用施設

原子力規制法令において、放射性物質を使用する施設を「使用施設」と言います。
放射性物質を使用する前には、必要な設備や場が健全であるか、またその使用方法が適切であるかといった観点から以下の確認を行います。

  1. ① 使用場所の空間線量率や汚染状況などの情報、使用時のモニタリング計画
  2. ② 使用施設の使用計画
  3. ③ 取扱う放射性物質の情報
  4. ④ 防護装備に関する情報
  5. ⑤ 使用するドラフトチャンバー(フード)等の換気設備が管理基準を満たしているか
  6. ⑥ 作業場所の汚染防止に関する情報及び汚染が発生した場合の除染の方法

今回は⑤と⑥について説明します。

⑤に記載する「ドラフトチャンバー(フード)」は、非密封状の放射性物質を取扱う場合に、放射性物質の飛散を防止し、
作業者が放射性物質を体内に取り込まないようにするために用いるものです。ドラフトチャンバー(フード)は以下の点を検査し適切に管理します。

  • ・ 設備自体に壊れている箇所がないか
  • ・ ダクトが排気系統に適切に接続されているか
  • ・ 必要な吸い込み気流を確保されているのか、それを妨げるものがないか
  • ・ グローブボックスの場合、閉じ込め性能を担保できているか

⑥では、使用施設の壁、床等の表面が平滑であり、気体又は液体が浸透しにくく、かつ、腐食しにくい材料であることが求められます。
さらに放射性物質の使用時には壁や床をポリシート等で養生しておく等して汚染拡大防止に努めます。
放射性物質は人間の五感で把握することができないため、取扱者が気付かないうちに衣服や体表面を汚染させてしまう可能性があります。
そのため、あらかじめ対策を図ることが汚染拡大防止という観点から特に重要です。

管理区域標識_使用施設 管理区域_使用施設画像 管理区域_使用施設画像

■廃棄施設

使用施設での放射性物質の使用に伴い、放射性廃棄物が発生します。気体、液体及び固体といった性状により、その管理の方法は異なりますが、例えば、固体状の放射性廃棄物は、ドラム缶等の容器に収納して保管廃棄施設で保管します。気体状又は液体状の放射性廃棄物は排気施設又は排水施設において、ろ過、放射能の時間による減衰、希釈等の方法によって排気中又は排水中における放射性物質の濃度をできるだけ低下させた後に、施設から排出をします。放射性廃棄物を廃棄施設で適切に保管し、また施設外へ排出するためには、以下の点に注意が必要です。

  1. ① 使放射性廃棄物が容易に漏れ出ないように内容器等に入れ封止してから外容器に入れる
  2. ② 放射性廃棄物容器の健全性を定期的に確認する
  3. ③ 排気や廃水が通る経路に漏れがないかを確認する

①は、放射性廃棄物を容器内に閉じ込めて外部へ漏出させないための措置で、その最初のバウンダリが内容器になります。
封じ込めをすることによって放射性物質の場への漏洩や身体に付着することを未然に防ぐことができます。

②について放射性廃棄物を入れた後の容器は廃棄施設内で静置保管されますが、そのまま管理不要というわけではありません。
廃棄物容器の多くは金属製の容器で錆等により腐食する可能性があるため、定期的に容器の健全性を点検することが必要です。

③について気体状又は液体状の放射性廃棄物を施設外に排出する系統に漏れがあると、排気、排水設備が持つ機能が大きく損なわれるだけでなく
場の汚染を引き起こすことになります。定期的に漏洩検査などを行い設備に異常がないかを確認することが必要です。

管理区域標識_廃棄施設 管理区域_廃棄施設画像 管理区域_廃棄施設画像

原子力関係の法律では一般公衆と作業者の放射線障害防止と環境保全が求められています。そのことを理解した上で平時の施設管理や場の管理を行うことが緊急時に的確な対応が取れる第一歩となるでしょう。

このページのトップへ