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放射線を知る

放射線の透過と遮蔽

放射線は物体を透過する性質があります。
この性質を使用してレントゲン博士はX線を発見しました。

物体を透過する能力の大きさのことを透過力といい、放射線の種類によって透過力は異なります。
α線、β線、γ線(X線)の透過力を比較すると、透過力が一番大きいのがγ線で、次にβ線、透過力が一番小さいのがα線です。

放射線の種類と透過力の違いは下の図のようになります。

放射線の種類と透過力
放射線の種類と透過力
(出典:一般財団法人 日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」)

α線は1枚の紙で遮へい(放射線を止めること)できます。
β線は紙を透過しますがアルミニウム等の薄い金属板で遮へいできます。
γ線(X線)を遮へいするためには鉛や鉄の厚い板が必要です。
中性子はα線、β線、γ線の性質とは異なり、水素を多く含む物質で遮へいできます。
これについては後ほど説明します。

 

○α線が物質に当たったら

  • α線は1枚の紙で止めることができます。
    物質に当たったα線はどうなるでしょうか。
    α線はヘリウムの原子核の粒子線であることを以前説明しました。α粒子はプラスの電荷を持ち、その進路にある原子・分子を電離または励起することによってみずからのエネルギーを失い、ついには止まります。止まったα粒子は周囲の原子から電子をもらいヘリウムとなります。現在地球上のヘリウムガスは、天然ガスより抽出されますが、その起源は地中にあるウランやトリウムから発生したα粒子であると考えられています。
 

○β線が物質に当たったら

  • β線は紙を透過しますがアルミニウム等の薄い金属板で止めることができます。
    物質に当たったβ線はどうなるでしょうか。
    β線は電子の粒子線であり、β粒子はマイナスの電荷をもちます。周囲の原子の原子核である陽子のプラスの電荷と引き合って周囲の原子を電離や励起しながら、軌道電子や原子核との電気的な相互作用の影響を受け、方向を変えエネルギーを失っていきます。
 

○γ線が物質に当たったら

  • γ線を止めるためには鉛や鉄の厚い板が必要です。
    物質に当たったγ線はどうなるでしょうか。
    γ線はエネルギーの大きい電磁波です。
    電荷をもたず、大きさもないので原子核と反応しにくく、何かに当たるまで真っすぐに飛んでいきます。
    γ線がα線やβ線に比べて透過力が大きいのはこのためです。
    γ線が物質に当たると、物質中の電子に吸収や散乱という形で相互作用を起こし、物質にエネルギーを与え減衰していきます。
 

○中性子が物質に当たったら

  • 中性子は透過力が大きい性質があります。
    物質に当たった中性子線はどうなるでしょうか。
    中性子は電荷をもたず、原子核とぶつかることにより様々な反応を示します。原子核に当たって方向を変えたり、原子核を励起したり、原子核に取り込まれ相手の物質を変えたりしながらエネルギーを失っていきます。

    中性子が水やコンクリートなど、水素原子を多く含む物質で止めることができるのはなぜでしょうか。
    ここはビリヤードを例にして説明します。
    ビリヤードの手玉と的玉は同じ重さであり、手玉を的玉に真っすぐ当てると、手玉は止まり的玉が手玉と同じ方向に同じ速さで動きます。
    水素原子の原子核は陽子であり、中性子と陽子はほぼ同じ重さです。
    もうお分かりでしょう。中性子が水素原子と真っすぐ衝突すると、中性子は止まり水素原子が飛んでいきます。
中性紙を止めるには
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