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放射線を知る

放射線の種類(X線、γ線、β線、α線、中性子線)

放射線の種類について、様々な視点から説明する回の第2回目です。
今回は、X線、γ線など具体的な放射線の種類をあげ、その発生のメカニズムと性質(粒子線なのか電磁波なのか、荷電粒子なのか中性粒子なのか・・・)について説明します。

○電磁波

・X線

まずは健康診断のレントゲン撮影などでおなじみのX線からです。
X線には2種類あり、それぞれ特性X線と制動X線といいます。
電離によって空いた軌道電子の位置に外側の軌道の電子が入ってくる際に、2つの軌道のエネルギーの差が電磁波の形で放出されるものを特性X線といいます。
また、自由電子が原子核の近傍を移動する際に、電気的な力(クーロン力)で原子核から引っ張られるためブレーキがかかり、失ったエネルギーが電磁波の形で放出されるものを制動X線といいます。

X線は電荷をもたない電磁波なので、物質と反応して間接電離をおこします。

特性X線の放出図

特性X線の放出

制動X線の放出図

制動X線の放出

 
特性X線・制動X線放出による原子核の変化と特性X線・制動X線の電荷表

特性X線・制動X線放出による原子核の変化と特性X線・制動X線の電荷

・γ線

エネルギーが高い状態の原子核(励起状態といいます)は、余分なエネルギーが電磁波という形で放出され、落ち着いた状態の原子核(基底状態といいます)に変化します。この放出される電磁波をγ線といいます。γ線を放出する原子核の壊変をγ壊変といいます。

γ線はX線と同じく電荷をもたない電磁波なので、物質と反応して間接電離をおこします。

γ線の放出図

γ線の放出

 
γ壊変による原子核の変化とγ線の電荷表

γ壊変による原子核の変化とγ線の電荷

 

・X線とγ線は何が違うのか

X線とγ線はどちらも質量と電荷をもたない電磁波の一種です。

では、X線とγ線は何が違うのでしょうか。
X線は原子核の外側から放出され、γ線は原子核から放出されるという違いがあります。

○粒子線

・α線

大きな質量数をもつ原子では、原子核が不安定になり、原子核から陽子2個と中性子2個の粒子(ヘリウムの原子核)が飛び出します。
このヘリウムの原子核による粒子線をα線といい、α粒子は陽子2個分の電荷をもつ荷電粒子です。
陽子1個の持つ電荷の絶対値を電気素量eという定数で表します。陽子は正電荷をもつため、「α粒子は+2eの電荷をもつ」ということもできます。 α粒子は電荷をもつため物質と反応して直接電離をおこします。

 

α線を放出する原子核の壊変をα壊変といいます。

α線の放出図

α線の放出

 
α壊変による原子核の変化とα粒子の電荷表

α壊変による原子核の変化とα粒子の電荷

・β

陽子に対して中性子が多すぎると原子核は不安定になり、原子核の中の1個の中性子が、陽子と電子に変化して電子が原子核から飛び出します。
この電子の粒子線をβ線といい、β粒子は電子1個分の電荷をもつ荷電粒子です。電気素量eは、電子の電荷の絶対値にも等しく、電子は負の電荷をもつため「β粒子は-eの電荷をもつ」ということもできます。
β粒子は電荷をもつため物質と反応して間接電離をおこします。

 

β線を放出する原子核の壊変をβ壊変といいます。

β-線の放出図

β線の放出

β-壊変による原子核の変化とβ-粒子の電荷表

β壊変による原子核の変化とβ粒子の電荷

・β

β壊変のときとは逆に、中性子に対して陽子が多すぎても原子核は不安定になり、原子核の中の1個の陽子が中性子と陽電子に変わり、陽電子が原子核から飛び出します。陽電子とは、電子と同じ質量で、電子とちょうど正反対の電荷をもつ粒子です。
この陽電子の粒子線をβ+線といい、β+粒子は+eの電荷をもつ荷電粒子です。
β+粒子は電荷をもつため物質と反応して間接電離をおこします。

 

β+線を放出する原子核の壊変をβ+壊変といいます。

β+線の放出図

β+線の放出

β+壊変による原子核の変化とβ+粒子の電荷図

β+壊変による原子核の変化とβ+粒子の電荷

・中性子線

電荷をもたない中性子の粒子線を中性子線といいます。
この中性子の放出にはいくつか種類があります。

・核分裂

質量数の大きい原子核に中性子がぶつかると原子核が2つ以上の破片(核分裂生成物といいます)に分裂し、2~3個の中性子を出すことがあります。 これを核分裂といいます。

また、原子核の種類によっては、中性子がぶつからなくても、ひとりでに分裂することもあります。
これを自発核分裂といいます。

核分裂による中性子の放出図

核分裂による中性子の放出

核分裂による原子核の変化と中性子の電荷表

核分裂による原子核の変化と中性子の電荷

・原子核反応

ある原子核にα線などの粒子がぶつかると、吸収されたり別な種類の粒子が飛び出したりするような反応を起こすことがあります。
これを原子核反応といいます。
例えばα粒子がぶつかったときに、中性子が1つ飛び出す反応を(α,n)反応、中性子が2つ飛び出す反応を(α、2n)反応、陽子が1つ飛び出す反応を(α,p)反応といいます。
その他にも原子核反応には様々な種類があり、核分裂も原子核反応のひとつです。

(α,n)反応による中性子放出図

(α,n)反応による中性子放出

(α,n)反応による原子核の変化と中性子の電荷表

(α,n)反応による原子核の変化と中性子の電荷

○まとめ

この項で説明した放射線を表にまとめました。

(α,n)反応による中性子放出図

いろいろな放射線

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